5月となりました。そろそろ気になるのが梅雨ですね。もっとも梅雨入りが早い沖縄の平年値は5月10日頃となっています。1980年には4月20日頃に梅雨入りしています。鬱陶しい季節が迫ってきました。
そんな梅雨ですが、気象予報士泣かせとなっています。気象予報士にとって予想が難しいのは、冬の南岸低気圧と梅雨時期となっています。冬の南岸低気圧の予想が難しいのは別の機会で、今回は梅雨時期の予想が難しい理由についての説明です。
「予報がコロコロ変わる」とか「大ハズレ」は、秋や春の低気圧の雨ではあまりありませんが、梅雨時期にはよくあります。これは春や秋の低気圧と梅雨前線では、規模や動き方が大きく異なるためです。
気象現象は規模が大きいほど予想がしやすいという特徴があります。春や秋の低気圧の規模は1000km単位で広い範囲を覆い、雨雲は西から東へ順に動くため、雨の量や降る時間帯が多少は外れることがあっても、「雨がかすりもしなかった」ということはほとんどありません。一方、梅雨前線は、南北方向の規模は100km単位と、低気圧の1/10。雨雲は”細い帯状”に広がります。その帯が南北に動くので、「(梅雨前線が)かかりそうでかからない」という現象が起こります。しかも、雨雲の帯のすぐ北側は薄曇りや晴れのエリアです。このような理由により、梅雨時期の天気予報は難しくなっています。
また、梅雨前線は北のオホーツク海高気圧と南の太平洋高気圧との境目に発生するのですが、この北と南の高気圧の勢力が拮抗して動き方が南北に上下するということが、予想を難しくしています。北と南の高気圧の張り出しにより、梅雨前線は、南北に上下動することがあったり、そのまま停滞したりします。気象庁のスーパーコンピューターの精度は年々向上しており、低気圧のように大きな雨雲のかたまりが西から東へ動くことに関しては精度良く予想できていますが、帯状の雨雲が南北に動く予想はまだまだ不完全なことがあります。
さて、梅雨時期の雨の予想は難しくなっているという説明をしてきましたが、波の予想も難しくなっています。梅雨前線の北側では、北の高気圧から吹き出す北寄りの風が吹いており、南側では南の高気圧から吹き出す南風となっています。この北・南風により、波が発生・発達することもあれば、波が消されてしまうこともあります。ほんの少しの梅雨前線の南北の上下動により、波が発生・発達することもあれば、波が消されてしまうこともある、ということになります。また、厄介なのが、停滞前線上で発生する低気圧。上述にあるように、梅雨前線の規模は高気圧や低気圧と比べると1/10となっています。このような規模の梅雨前線上で発生する低気圧は、さらに規模が小さくなっています。規模が小さければ小さいほど、正確な予想は難しくなっています。かみ砕いていうと、梅雨前線上には予想外の低気圧がいきなり発生して、消滅することもあれば、発達することもあります。この低気圧によって、いきなりサイズアップ! なんてこともあります。
これからの梅雨の時期は、マメに波情報や概況を確認するようにしてください。